「せんと、らせんと、」6人のアーティスト、4人のキュレーター展

2021

会期: 2021年12月11日(土)〜2022年2月2日(水)7:30-22:00
会場: 札幌大通地下ギャラリー500m美術館(地下鉄大通駅と地下鉄東西線バスセンター前駅間の地下コンコース内)
主催:札幌市 
企画:CAI現代芸術研究所/CAI03、一般社団法人PROJECTA

キュレーター|飯岡陸、四方幸子、柴田尚、長谷川新
展示作家:進藤冬華、朴炫貞、是恒さくら、マリット・シリン・カロラスドッター、モーガン・クエインタンス、ピョートル・ブヤク


500m美術館は2011年11月のスタートからちょうど10周年となる節目において、6人のアーティスト、4人のキュレーターによる展覧会「せんと、らせんと、」を開催いたします。参加アーティストである進藤冬華[飯岡陸]、朴炫貞[同]、是恒さくら[四方幸子]、マリット・シリン・カロラスドッター[柴田尚]、モーガン・クエインタンス[同]、ピョートル・ブヤク[長谷川新]、は、それぞれキュレーターと協働して作品を発表します([]内が担当キュレーター)。4人のキュレーターが設定したテーマは独立していますが、相互に共通する問題意識が反響しています。札幌の地下を貫く空間を通過しながら展覧会を経験することで、同時代的なうねりを感じていただければ幸いです。500m美術館のある地下コンコースは、札幌の冬季五輪時(1972年)に開通した南北線と、その4年後にできた東西線をつなぐ通路として作られた直線的な空間です。明治期の開拓に続いて近代都市としての大きな整備が行われたこの時期に、札幌の東西軸が地中へと延長されました。本展では、この「せん(線)」のあとに、「らせん(螺旋)」という立体的な単語を重ねました。直線を歩いていく鑑賞体験が、個々の表現に触れるなかで螺旋をめぐるようにダイナミックに関係しあっていくことが目指されています。500m美術館の真上には、札幌の東西南北が交差する0座標を含む大通が東西を走っています。大通公園にある彫刻家イサム・ノグチの作品《ブラック・スライド・マントラ》(1992年)*は、人々を螺旋状に下から上へ、そして上から下へと誘導する滑り台です。この滑り台ができた後、近くにあった1本の道路が子どもたちの動きを尊重して公園の一部として整備されたという逸話が残されています※。それは、ある線を巻いてつくられた螺旋の運動が、公園を通過していた1本の直線を巻き込み、より大きく、開かれた遊び場を作り出した出来事と言えるでしょう。「キュレーター」とは、アーティストと協働して芸術と社会をさまざまなかたちでつなぐ実践をする人を指す言葉です。「せんと、らせんと、」展をきっかけに、さまざまな出来事が異なる時間や空間を超えてかかわりあっていくことを願っています。

飯岡陸、四方幸子、柴田尚、長谷川新(本展キュレーター)

 *ノグチは公園の真ん中に走る道路を廃止し、左右の公園を繋げたうえでこの彫刻を置くというプランを残し、1988年に亡くなりました。この前代未聞のプランは実現が難しく、彫刻は一旦、片側の公園に設置されたそうです。しかし《ブラック・スライド・マントラ》が親しまれていくなかで市民からの要望も高まり、ついに道路がなくなり、子どもたちが自由に動き回れるよう公園が広げられました。(川村 純一、 斉藤 浩二『建設ドキュメント1988-: イサム・ノグチとモエレ沼公園』 戸矢晃一構成、学芸出版社、2013年)

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是恒さくら「汀線の唄」展について(四方幸子)

是恒さくらは、鯨と人とが関係してきた国内外の地域に寄り添いながらフィールドワークを行い、刺繍作品やリトルプレスとして発表してきました。北海道では近年網走や苫小牧でリサーチし、2021年春から数カ月札幌に滞在した彼女の札幌での初の展示となります。東北から北海道での体験を経て、「各地域と鯨との関係性」から「鯨信仰」へと関心が展開を遂げました。2021年9月に苫小牧に移住、その前月に苫小牧の浜辺で漂着した幼いマッコウクジラに出会ったことが、新たな触発となりました。是恒の〈これまで〉と〈これから〉の旅路を、「汀線の声」と「汀線をゆく」として紹介します。
    
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2021年6月25日
是恒さくら アーティストトーク「鯨寄る、海岸線の物語を編む」
聞きて:四方幸子
オンライン
主催:さっぽろ天神山アートスタジオ

2021年12月12日
AIRマスタークラス第1回「北海道・札幌の文化と作品製作―キュレーターの視点から」
主催:NPO S-AIR
会場:なえぼのアートスタジオ(札幌)+オンライン
出演:飯岡陸、四方幸子、柴田尚(NPO S-AIR)、長谷川新、端聡(CAI/CAI03)

▶ 「せんと、らせんと、」展 ▶ 是恒さくら アーティストトーク「鯨寄る、海岸線の物語を編む」聞きて:四方幸子(アーカイブ) ▶ 「北海道・札幌の文化と作品製作―キュレーターの視点から」キュレータートーク部分(アーカイブ)
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